1人当たり5,000円以下の飲食費は、インボイス制度開始後も引き続き、“5,000円”をボーダーラインと考えていいですか?
― M社 ―
M社経理部まいと顧問税理士が、打ち合わせをしています。
そういえば。先生。
インボイス制度が始まりましたね。
そうですね。
営業担当から10月の立替精算書が提出されてきて、今確認しているのですが、インボイスが必要な経費なのかどうか、必要であれば添付されている書類がインボイスかどうかの確認に結構時間がかかって大変なんです。
そうですよね。
慣れるまでの間は、大変ですよね。
その立替精算書の中に接待飲食費があったので領収書を確認したところ、インボイス発行事業者の登録番号の記載がなかったんですよ。
恐らく、インボイス発行事業者以外の事業者が経営する飲食店だったのですね。
やはりそうですよね。
領収書には税込21,780円とありました。参加者は4名分の記載がありましたので、1人当たり5,445円です。
弊社は税抜経理方式を適用していますので、これまで「1人当たり税抜5,000円」をボーダーラインとしていました。つまり、税込ですと5,500円がボーダーラインとして判断しています。
今回は税込5,445円だったので、交際費等から除外する仕訳を起こせばよいですよね?
それは、違います。
インボイスではない場合、原則、仕入税額控除はできません。
ただし経過措置があり、2023年10月の接待飲食だったのであれば、8割相当の仕入税額控除が可能です。
ということは仕入税額控除ができない2割相当についてはコストに含まれることになります。
つまり、税込5,445円のうち消費税相当額495円の8割相当である396円が仕入税額控除(仮払消費税)となります。5,445円から396円を差し引いた残額5,049円が1人当たりの税抜の飲食費として考えます。
結果として5,000円を超えていますので、交際費等から除外することはできません。
インボイス発行事業者とそうでない場合で、ボーダーラインが変わるのですか?
そうなります。
となると、今回は交際費等から除外しないとして、こういった場合のボーダーラインは、いくらになりますか?
経過措置の期間、といいますか、仕入税額控除が可能な割合に応じて金額が変わります。
たとえば2026年9月末までは、インボイス発行事業者以外ですと、円未満端数切捨てで計算した場合、税込5,393円、税抜4,902円になります。
インボイス発行事業者の場合は、変わりませんよね?
ご理解のとおりです。
税込5,500円、税抜5,000円ですね。
金額の基準が変わったことを営業担当に伝えてもらうよう、部長に報告します。
それにしても、物価が上昇しているのにこういった金額は上げてもらえないんでしょうか?
実は厚生労働省が提出した令和6年度税制改正要望に、物価の動向等を踏まえた金額の引上げがありました。こういった話題性のあるものは、大綱公表前に報道されるケースもありますが、年末の大綱で出るといいですね。
そうですね。
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